ようこそ 宮脇書店 高須店へ トップページ
 
おすすめの本 旬のフェア おはなしの森 土っ佐の一言 専門情報 今週のBest10 次のページへ
トップページ >> 土っ佐の一言
    土っ佐の一言

当店に関わりのある方々にお話を伺うこのコーナー。

第2回目の方は甲浦中学校 尾崎文明さんです!



甲浦中学校 尾崎文明 様
いい本に出会えると うれしくなる 
2005年1月24日    尾崎文明  
昨年から今年にかけてずいぶんといい書物に出会った。「幻夜」(東野圭吾)、「博士の愛した数式」(小川洋子)、「神様のボート」(江国香織)、「蝉しぐれ」(藤沢周平)など深い感動を覚えた。「約束」(石田衣良)、「空中ブランコ」(奥田英朗)もけっこう良かったが、はじめの4冊のほうが好きだ。
ふらっと本屋を訪ねるのはいいものだ。高知にはなかなかいい本屋がある。金高堂、宮脇書店、TSUTAYAなどで、書物を眺めていると何となくホッとしてくる。なかでも、宮脇書店は工夫しながら本の配列をしているので、私のお気に入りの書店だ。店長とは、たまたま高校の同級生であるが・・・。本の紹介もかねて私のお薦めの1冊を紹介します。もし、参考になれば、とってもうれしく思います。
----------------------------重力ピエロ  伊坂幸太郎  新潮社-------------------------------
“春が二階から落ちてきた”の一行から始まる。春というのは主人公の名前である。そして、ラスト一行も”春が二階から落ちてきた”の文で終わる。この最後の一行に到達したとき、言いようのない深い気持ちにさせられる。
春の本当の父親はレイプの常習犯である未成年だった。春には二歳違いの兄がいる。父と母の四人家族だ。小学校5年の時、春の描いた絵が県のコンクールで大賞に選ばれた。高い芸術的才能をもっていた。この報せを聞いた時、役所から帰宅した父は、右手でガッツポーズをした。家族そろって展示場に出向いた時、「事件」がおきる。
この時、まだ出生の事情について、両親から聞かされていなかった。しかし、審査員はそのことを知っており、間接的に暴露してしまう。審査員の画家は、自分の絵画教室の生徒より、春のほうが素晴らしい絵を描いたので、苛立っていたらしい。そして、その女性の審査員に「僕とお父さんが似ていないのが何かいけないわけ?」と言って、その額を取りはずし、たたきつける。母が何度か止めに入り、やっとのことでその額を取り返した。今度は、春から奪ったその額を振りかぶり、倒れたままの審査員の尻を、母が叩いた。散々注意を受け、受賞は取り消しとなった。それから、春は絵を一切描かなくなった。ここから物語りは佳境に入っていく。
ミステリーの形をとりながら、”家族とは何か””人として生きるとは”を鋭く問いかける見事な傑作だと思う。ベストセラーとなった「バカの壁」よりかは数段優れているのは言うまでもない。          
 
本やタウン 和書のご注文
スカイソフト 洋書のご注文 コピーライト 宮脇書店